2020年11月15日日曜日

林業×〇〇を探してみた 演劇編

 

林業×〇〇を探してみた

演劇集団 円「光射森」

林業を愛しアクションする「林業女子」が、東京で林業に関するものを探してみる企画。
今回は、林業と人々の営みに光をあてた演劇集団 円の新作「光射ス森」ついて、作・演出の内藤裕子さんと出演の吉田久美さんに作品に関してお話しをうかがいました。

更新日:20201115

家業としての林業をテーマにした理由 「1次産業と家族を思い描きたい」

―そもそも、どうして林業をテーマにした演劇を作ってみようと思われたのでしょうか。

内藤 私は埼玉県の田んぼに囲まれた地域で育ちましたが、田園風景が宅地化されていくことに寂しさを感じていました。2014年に演劇集団 円で初めて脚本を手掛けた際に一次産業・家業である稲作、その後も藍染などのテーマを扱ってきました。今回、題材を選ぶ際に、一次産業であり家業でもある林業が日本では大事であること、近年山間部での災害のニュースが増えたこと、その土地で家業を守って生きる家族を思い描きたいと、林業をテーマにしました。

      ▲作・演出の内藤裕子さん              

―作品の中では家族や恋愛といった人間模様も描かれています。

内藤 自分自身は親戚付合いが薄いので、逆に家族での密な関係が、貴重で素晴らしいことと感じていました。そういう意味で、家族間でのやりとりは、私にとっての“ファンタジー”なんです。お芝居の中に、恋愛や家族の生活を入れたいという想いがあります。実際に林業をする中で、意外と無口な人が仕事をできたりすると、恋愛に発展するといったこともあるのではないかと感じます。

―なるほど。一次産業や家族が、ご自分から縁遠い“ファンタジー”だからこそ、演劇として疑似体験したいということもあるのですね。

作品づくりのために出演者と一緒に林業家を訪ねた

―内藤さんも吉田さんもこれまで林業には縁がなかったということですが、どのように作品作りを進められたのでしょうか。作品内では、補助金の話や、山林を家族で引き継いでいくなどリアルな林業像が描かれています。

内藤 大部分は書籍や林業関連の方のブログから調べています。自身が知らないところで、林業に情熱をもっている方がいることを知りました。林業を調べていくと、川上(木材生産)から川下(消費)まで産業がつながっていて、実は生活に関わっていることがわかりました。作品には入れられませんでしたが、ドイツのフォレスター制度なども調べ、現場を知った方が政策を決めていることが素晴らしいと感じました。小さなころから林業に触れて理解していくことも必要だと感じ、体育や食育と同じように、小学校の必修科目にしても良いのではと感じました。

―確かに、家業で続けている産業は、当たり前のものとして扱われ、改めて学ぶ機会が少ないかもしれません。小さな頃に、どういうイメージで教えてもらうかが、その後のとらえ方につながると思います。

―作品作りの過程では、出演者の方と一緒に林業地にも行かれたと伺いました。

内藤 知り合い伝手で、静岡県の林業家の方にお話を伺ったのですが、水源地で林業をされていることもあって、多くの人に活動を知ってほしいと快く受け入れてくださいました。 私が演出するときには、実際にテーマになった産業の現場に行ってみています。過去には、藍染や稲刈りの体験をしたこともあります。演劇は作り事ではありますが、役者が身体を通じて触れてみることで、違いが出ると思います。

吉田 恥ずかしながら、私は今回初めて林業を知りました。林業地に行ったことで、現場のイメージができて良かったです。産業が生活に根差した時の辛さや楽しみがわからないと演じるのが難しいと感じます。こうして、いつも何か新しいことに出会えるのが演劇の魅力でもあります。今回の劇を通じて、林業家や林業女子の皆さんに出会うことができたので、嬉しいです。

       ▲出演の吉田久美さん                 

庭で挿し木に挑戦?新型コロナウイルスが作品に与えた影響

―「光射ス森」は、本来であれば今年の5月に公演予定でしたが、新型コロナウイルスを受けた自粛期間の影響で12月公演となりました。半年間延期になったことで作品に変化はあったのでしょうか。

吉田 私は、上演できない間に何かしたいと思い、自分が演じる役の家業が農林業だったので、枝豆を育てたり、庭の木を触って少し伐ってみたり、挿し木をしてみました。実際にやってみて、こんなに手間暇がかかるのか、本業で林業をされている方は、どれだけ時間をかけて先のことを考えてされているのかと思いました。また、今回の劇は家族でのやり取りがメインなので、稽古場で休憩時間の会話を意識して増やすなど、劇団員同士の距離を縮める努力をしています。

内藤 公演の季節が変わったことで、脚本を見直すことも考えましたが、結局変更はしませんでした。作品に季節感を持たせているので、本当は5月に上演できればという思いはありましたが、あえて春を感じる部分を残すことで、本来であれば普通の日常が流れていた時期、失われた春、というものを感じ取ってもらえればと。また、作品のテーマである「普通の家族」や「日々の生活」というものが、自粛期間を経てより重要性が増したと考えています。

作品内で登場する林業女子、それぞれの家族の林業の選択について

―林業に従事する女性が登場することに少し驚きました。

内藤 実は演劇業界でも機材担当などの過酷な仕事を続けている女性が増えてきているのですが、林業界でも前より長く従事する女性が増えているとうかがいました。そういう点で、林業界で働く女性にシンパシーを持ちました。

―登場人物によって、林業のやり方に対する拘りや目標が違う点も気になりました。実際の林業界でも、森づくりについては様々な考え方があるのでそれを考慮されたのでしょうか。

内藤 林業については、地域や家族の状況によってやり方は変わるので、今までのやり方を守るのか、新しいやり方に切り替えるのか、どちらに振ることもないのではと考えています。一番大事なことは、山に人が入り続けることではないでしょうか。家族で話し合ったり、外から応援したり、政府が補助金の交付をしていくことは、なかなか難しいと想像しますが、考えていく必要があると思います。やったことの結果が出るのが何十年も先なので、それが林業の面白いところであり、難しさでもあると理解しています。

さいごに 

―今回の演劇を通じて、初めて林業を知る方、あるいは家族との会話を通じて自分が山を持っていることを知る方もいるかもしれません。ぜひ多くの方に観ていただきたいと感じました。

▲演劇集団 円の活動拠点前で、作品に登場する“あるもの”を投げるポーズの演劇女子&林業女子

インタビューを通じて林業女子たちが感じたこと

―今回、インタビュアーとして参加した林業女子の声をまとめました。



















 

インタビュイー&インタビュアーの情報

演劇集団 円 「光射ス森」公演について(11/16よりチケット販売)
https://en3987.wixsite.com/en-hikarisasumori
 

演劇集団 円について

http://www.en21.co.jp/

 

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林業女子会とは

林業女子会とは、林業を愛し、アクションする、100年先を考える余裕の女子♪のプラットフォームです。

①林業の魅力を発信する「情報発信」、②仲間づくり「ネットワーキング」を目的に活動しています。

2020年現在、国内外で27の地域で、各地の林業女子会(任意団体)が活動しています。


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